障害理解教育の教材となる絵本の紹介①
私は、多くの子どもが初めて触れる「絵本」というメディアが、子どもたちが障害を知るきっかけになると考えています。
自分が経験していないことを理解するのは難しいことです。それこそ体の中身がそっくりそのまま入れ替わることでもない限り、他の人と同じ経験や感情を共有することは出来ません。しかし、難しいからといって理解するのが不可能かというと、そうではありません。1人の人間が経験できることは本当にわずかで、私たちは無意識に想像力によって自分の経験を補っています。自分が経験していないことを理解するためには、それについて考えを巡らせて、理解しようとすることが必要だと言えます。障害理解についても同じことが言えます。障害のない人が障害を理解することは難しいけれども、難しさや感情を想像することで理解が深まります。
しかし、ここでもう一つ大事なことがあります。それは、想像には「知識」という材料が必要だということです。知らないことに考えを巡らせることは出来ないし、一人歩きの想像は反対に事実から遠のいて誤解が生まれ、差別や偏見の種になってしまうこともあると思います。
そのうえで、新しい「知識」と出会う場所はとても重要です。人間同士の初対面の印象がそうであるように、その人について誤解が無く、また会いたいな、もっとその人を知って仲良くなりたいな、そう思えるような出会いが理想的です。そのような知識との初対面の場として、私は「絵本」を提案したいと思っています。
多くの絵本は、短い文章と絵で構成されています。言葉だけでは理解が難しい内容も、絵があることでグッとイメージしやすくなります。また絵本にはどこか、自分と知識を自然に近づけてくれる力があると思います。「しなければいけない宿題」に億劫さを感じるように、「知らなければいけない知識」という強制力が垣間見えると、人はどうしても距離をとってしまいたくなるものです。全ての絵本がそうであるとも限りませんが、厚かましさなく知識を紹介してくれる感じが絵本にはあるのです。
これから、障害理解の教材となる絵本の紹介を始めます。子どもたちが、絵本をきっかけに障害についての「知識」と出会い、自分の経験していないことを想像し、理解を深めることに繋がれば良いなと思います。