障害理解の教材となる絵本の紹介④『いっぽんのせんとマヌエル』
今回紹介するのは、絵本『いっぽんのせんとマヌエル』です。
【世界自閉症啓発デーについて】
今日、4月2日は「世界自閉症啓発デー」ということで、自閉症の理解につながる絵本を紹介します。その前に、まずは「世界自閉症啓発デー」がどのような日なのか簡単に紹介したいと思います。
「世界自閉症啓発デー」は、2007年の国連総会で定められた自閉症に関する理解を深めようとする日で、毎年4月2日がその日となっています。また、日本では4月2日から8日までが発達障害啓発週間となっていて、様々な啓発活動が行われています。
【絵本の紹介】
この『いっぽんのせんとマヌエル』は、一見すると不思議な絵本かもしれません。絵本の中にはずっと、青い一本の線が描かれています。ページをめくってもめくっても、この線は繋がっています。
そしてもう1つ不思議に思うポイントがあります。それは文の上に、単語ごとの言葉を絵で表現した絵文字がついていることです。例えば、「せんのなかでおとうととあそぶ。」という文章の上には、「せん」「おとうと」「あそぶ」という単語とその絵文字があります。他の絵本ではおそらく見たことがないと思うので、初めてこの絵本を読んだ時、「これなんだろう…?」と多くの人が不思議に思うことでしょう。
実はこの絵本は、著者のマリア・ホセ・フェラーダさんが自閉症の男の子マヌエルくんと出会って作ったものなのだそうです。自閉症のマヌエルくんは「線」が大好きで、いつも「線」をみつけながら自分の世界をかたちづくっているのだそうです。マヌエルくんから見る世界にとって、この「線」というものは大切で必要なものであることが分かります。だからこの絵本は「線」を中心に描かれているのです。この絵本は、子どもによってそれぞれ違う、好きなものや大切にしているもの、興味があるものを知ろうとするきっかけにもなると考えられます。
また、文の上にある絵文字は「ピクトグラム」というもので、そのページの内容や文の理解を助けるために付いています。絵本は映像ではないので、そのページの文の内容が静止した状態で描かれています。しかし、その「ある場面の絵」と、「文」だけでは理解が難しいことがあります。1つ1つの単語は分かっても、文になると理解が難しいことがあるのです。その時に、この「ピクトグラム」という単語を絵で表した絵文字はその理解の助けになります。
最後に、「世界自閉症啓発デー」のシンボルカラーは青です。建物が青色にライトアップされたり、青色のものを身に付けたりします。なぜ青なのかというと、「癒し」や「希望」を表す色だからだそうです。この絵本もよく見てみると、「線」が青色になっています。
『いっぽんのせんとマヌエル』は、自閉症を初めて知るきっかけにとてもおすすめな絵本です。また、続編である『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』もあります。どちらも、可愛らしいタッチの絵とシンプルな文、そしてピクトグラムで描かれていて、とても読みやすい絵本です。ぜひ読んでみてください。
【参考】
・『いっぽんのせんとマヌエル』文:マリア・ホセ・フェラーダ,絵:パト・メナ,訳:星野由美,2017/8,偕成社