週刊本吉研究室➀6月14日号『障害理解ってなんだろう』

こんにちは。本吉研究室広報担当です。

本日からなんと、研究室のメンバーが週替わりで記事を担当するブログリレーがスタートします。

題して『週刊本吉研究室』。

それぞれがこれまで体験したこと興味を持って調べていることなどを楽しく、そしてちょっとためになるような記事にしてお届けしていきたいと思います。毎週の更新をぜひともお楽しみに!

さて初回は、私が記事を担当させていただきます。私は最近、『障害理解-心のバリアフリーの理論と実践-編著:徳田克己・水野智美』という本を図書館で借りて読みました。とても分かりやすく、「障害理解」についてなるほど!と思うことをたくさん知ることができる本でしたので、この記事を読んでくださっている方にもぜひ手に取っていただきたいです。今回は、その本を読んで私が知ったことをほんの少しだけ紹介することで、皆さんが『障害理解ってなんだろう』と考えるきっかけになるような記事になればと思います。

まず、皆さんは「障害理解」という言葉を聞いたことがおありでしょうか。この言葉がどのように定義されているかと申しますと、次のようにありました。

障害理解は「障害のある人に関わるすべての事象を内容としている人権思想,特にノーマリゼイションの思想を基軸に据えた考え方であり,障害に関する科学的認識の集大成である」と定義できます。

『障害理解-心のバリアフリーの理論と実践-編著:徳田克己・水野智美,p2,1.障害理解と心のバリアフリー』より

少し難しく感じるかもしれませんが、ここで注目してほしいキーワードは1つ、「障害に関する科学的認識」という言葉です。「障害理解」においてはこの「科学的認識」というものがなにより大事だということが、この本では分かります。「科学的認識」というのは、障害とは何か、障害特性にはどのようなものがあるのか、障害が生活や社会にどのような影響を及ぼすかについて知り、考えることです。なぜ、この「科学的認識」が重要なのでしょうか。この本のまえがきにおいて、障害理解教育の現状は次のように書かれています。

従来の福祉教育は体験中心主義であり,「障害児・者に関する認識の形成」よりも「障害者に対する情緒的理解」を強調することによって,障害児・者に対するファミリアリティ(親しみ)を向上させることに力点が置かれており、福祉意識・障害観の発達への寄与が疑問視されていることや障害観の歪みの発生などの点で問題がありました。

『障害理解-心のバリアフリーの理論と実践-編著:徳田克己・水野智美,まえがき』より

つまり、現在の障害理解教育では体験を通して障害を理解しようとする傾向があって、それは障害のない人が「自分だったら」と置き換えて障害がある人や障害を見ることで理解することを促すものだということです。

私も小学生の頃にアイマスクを付けて視覚障害のシミュレーション体験をした記憶があります。その当時の私の気持ちを正直に書きますと、「目が見えないのはこんなにも怖いことなんだ。見えなくなるのは嫌だな。」というものでした。体験を通して得たものは、単に見えないことへの恐怖心だけだったのです。今改めて考えると、このような気持ちで終わってしまうのは、先に述べたような「科学的認識」が形成されたとは言えない体験だと思います。さらには、そこで得た恐怖心から「見えない人はすごい。」などのような歪んだ障害観が生まれることもあるのです。

この本にも書いてありましたが、視覚障害のある人の多くは見えないことを怖いとは感じていないと言います。見えないことに不安や不便さを常に感じているわけではなく、正しくは視覚的な情報が得られないことで社会や生活の一場面において不便さを感じることがあり、援助が必要な時があるということになります。このような適切な障害観、「科学的認識」が形成されるためには、アイマスクなどをシミュレーション体験だけで終わらせてしまうのではなく、知識を得たうえで障害について考える事前学習体験を通して考えたり話し合ったりする事後指導が重要なのです。

障害理解」についてほんの少しだけ紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。この本を読むときっと、自分がこれまで受けてきた障害理解教育は本当にこのままでいいのかなと疑問を持つことになると思います。私はこの本を読んで、障害理解教育を行うにあたって考えるべきことや気を付けなければならないことが本当にたくさんあるのだと感じました。体験をすれば分かる、障害がある人から直接体験談を聞いたり本を読んだりすれば理解できる、という簡単なものでは決してないのだと知ることができます。

そして同時に、まだまだ「障害理解」について私が知らないことや考えたことがないことがたくさんあるのだろうとも思いました。だから私は、「障害理解」というテーマについてこれからもっともっと研究していきたいと思っています。

最後になりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。本ホームページにおきまして、『障害理解教育の教材となる絵本の紹介』の記事も書いておりますので、もしご興味があれば併せて読んで頂けるととても嬉しいです。

それでは、『週刊本吉研究室』を今後ともよろしくお願いいたします。

【参考】 『障害理解-心のバリアフリーの理論と実践-』編著:徳田克己・水野智美,2005/4/15,誠信書房

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