週刊本吉研究室⑱10月18日号『金木犀の香りと記憶』

みなさんこんにちは。ここ1~2週間、日中はまだ気温が高い日があるものの、朝夕はめっきり涼しくなりましたね。

先日、アパートに帰り着き、車から降りると、夕闇からすずむしの鳴き声がにぎやかに聞こえてきました。いったい何匹ぐらいのすずむしがいるのかなぁなどと思いながら、ほんの少し足を止め、その涼しげな音色に耳を澄ましていました。と同時に、どこからか金木犀の甘い香りが鼻をくすぐり、思わず身体全体にその香りを取り込みたい衝動に駆られ、深呼吸してしまいました。

私はなぜかこの金木犀の香りが昔から大好きで、脳内の記憶を呼び覚ましてくれるような感覚になります。コロナ禍でマスクをすることも多く、なかなか気づきにくくなっていたのですが、このすずむしの鳴き声と金木犀の香りで、気温の変化からだけでなく、聴覚と嗅覚からも秋の訪れを感じたところでした。

そこでふと、なぜこの金木犀の香りって、妙に懐かしい感じがして、癒やされるのだろうと思って調べてみました。詳しくは『金木犀の香りを嗅ぐと懐かしくなるのには、科学的な理由があった』(となりのカインズさん・政岡ゆり/昭和大学医学部生体調節機能学・准教授への取材から)という記事があり、図やグラフなどでも説明されていて、なるほどと思いましたのでそちらをご覧ください。

簡単に言うと、五感の中で視覚・聴覚・触覚・味覚は視床(情報を認識し、大脳新皮質へ中継する重要な役割を担う部位)を通って、脳の各部位へと伝達されるのですが、嗅覚だけは視床を通らずに、感情中枢・記憶中枢へと直接到達するため、あるにおいを嗅ぐと、過去の記憶やそれにまつわる感情を呼び起こすとのことです。また、視覚や聴覚は20代前半の記憶と結びつきが強いのに対し、嗅覚は圧倒的に10歳以下の記憶を想起させていることから、これが懐かしさに関係しているとのことです。さらに、この記憶を呼び覚ます香りは、意欲やモチベーションに関係している脳内の前頭葉のはたらきも活発にさせ、そのイメージが鮮明であるほど、前頭葉の活動は高まるそうです。

またもうひとつ、記憶のほかに、嗅覚と密接に関わっているものに“呼吸”があるそうです。上述した記事の中で、政岡先生は「心地良い香りを嗅ぐと、呼吸は無意識のうちに深くゆっくりと行われます。逆に、嫌な記憶に結びつくにおいとか、身の危険を感じるような不快なにおいを嗅ぐと、呼吸は浅く、速くなるんです」と述べられています。良い記憶と結びついた香りは、深い呼吸にもつながり、それが気持ちを落ちつかせることにもなるということです。

なお、この呼吸については、NHKの番組『あしたが変わるトリセツショー』において、心身の健康に“呼吸”が深く関係しているということを説明されていました。ゆっくりした呼吸は、心拍数の低下・血管拡張が起こり、その結果、血流がよくなり、コリや冷え症などの解消だけでなく、不安感やストレスの解消も期待されるということで、こちらも大変興味深かったのでぜひご覧ください。

感覚統合につまづきがあると、情緒面や対人面などにおいて困りごとが出てくるとも言われますが、この“心地良い香り”と“記憶”、そして“深い呼吸”をうまく融合させることができないかと考えた秋の夜長でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です