知的障害「生活スキルの指導・支援」買い物の流れを体験する教材

教材開発の経緯
家庭での役務・働きが高まることが,家庭での家族との余暇,本人一人での余暇の充実につながる可能性がある。」
(文献①武藏・水内,2009)

日常生活における家庭での役割の一つ「買い物」
→必要なものを買うスキルはもちろん、予算内で自分の欲しいものを買うスキルも必要となるのではないか
→生活スキルの一つとして、「買い物スキル」を育むための教材

①対象児童のイメージ
◇小学校6年生女児
・軽度の知的障害(身辺のことや日常的な会話はほぼ可能)
・特別支援学級に在籍
・お金の概念は獲得済みだが、“限られた時間で財布から必要な金額のお金を出して払う”という経験はない
・他人との会話はほぼ可能だが、質問することや自分の望み(~したい、~してほしい)を表出することは苦手
・優先順位を考えて行動するのが苦手

②学習指導要領における位置づけ
第4章第2節3「指導の形態について」
(3)各教科等を合わせて指導を行う場合
【各教科等を合わせた指導の特徴と留意点】
ウ 生活単元学習
生活単元学習は,児童生徒が生活上の目標を達成したり,課題を解決したりするために,一連の活動を組織的・体系的に経験することによって,自立や社会参加のために必要な事柄を実際的・総合的に学習するものである。

第4章第4節第3算数科
4「指導計画の作成と内容の取扱い」
(2)内容の取扱いについての注意
「(ア)内容の『A数と計算』の指導に当たっては,次のアについての金銭の価値に親しむことを取り扱うものとする。」については,児童の数理解に配慮し,生活科との関連を図りながら,金銭処理に関する指導を行うようにすることである。
特別支援学校学習指導要領解説 各教科等編

第2章第3節 C「消費生活・環境」
(1)物や金銭の使い方と買物
ア(イ)身近な物の選び方,買い方を理解し,購入するために必要な情報の収集・整理が適切にできること。
身近な物の買い方については,現金による店頭での買物を中心とし,予算や購入の時期,場所,必要な物を必要な分だけ買うことや,まとめて買うことなどについて考える必要があることを理解できるようにする。
小学校学習指導要領解説 家庭編

③指導目標
必要なものを必要な分だけ購入することができる。
自分の欲しいものを予算内で購入することができる。
限られた時間で財布から必要な金額のお金を出して払うことができる。
優先順位をつけて買い物をすることができる。(例:スーパーマーケットでアイスは最後にかごに入れる、など)
・商品の場所や値段などについて店員に質問することができる。

④評価基準(評価方法)
・児童用と指導者用の振り返りカードをExcelにて作成

⑤教材の準備の仕方
【材料】
・スケッチブック(B5)
・ラミネートフィルム(B5×5枚入り)2つ
・ファスナーテープ(マジックテープ)3つ
・色画用紙セット
・水性ペンセット
・のり
・両面テープ
・ハサミ
・Wordを用いてまとめたイラスト(いらすとや
・プリンター・ホワイトボードのマーカー

【作り方】
①Wordを用いてまとめたイラストなどに値段を書いた上でラミネートフィルムを貼る。
②ラミネートフィルムを貼ったものをそれぞれをハサミでカットする。
③財布やカゴを画用紙で作成する。
④スケッチブックに印刷した棚などを貼り、装飾をする。(ラベル作成)
⑤商品カードとスケッチブックにファスナーテープ(マジックテープ)を貼る。
⑥カードの収納袋を作り、裏表紙に収納できるようにする。
⑦表紙を装飾しラミネートフィルムを貼る。

⑥工夫した点
・貼って剥がせる、書いて消せるなど繰り返し使うことができる設計。
・ラミネートフィルムを使用することで耐久性が高まる。
・色鮮やかにし、操作性を良くする(単純な操作)
→児童の興味を引き、注意集中しやすくする
・優先順位を考える場面を設定し、ただの買い物ごっこにならないようにした。
・「セール」のように値段が値札通りではない場面を想定した。
→自分で一生懸命計算するより店員に聞いた方が早い。
→ただの「遊び」で終わらない、実際の生活場面を想定した工夫

⑧今回の開発における課題
【教材そのものの課題】
・作成にあたっての作業が単調ながら時間がかかる。(正確ではないが、半日以上はかかったと思われる。)
・発展や応用を考えにくい教材である。(実際に現地に赴いて買い物をしてみるという発展は考えられるが、本教材を用いた次のステップを考えるのは難しい。)
【指導する際の課題】
・教材で買い物を体験することに慣れてしまうことが考えられる。(次第に作業化してしまう、面白みに欠け意欲が低下する等)
・般化の難しさに対応できているのか。
→特にスーパーマーケットなどなるべく児童の家庭がよく使う店に構造を似せる。
・教材での商品はイラストであり実物と異なる。
→この教材で何度か学習した後に実際に店に赴いて実物を見ながら買い物を実践してみる。
→実践中に生じた課題の解決に向け改めて教材に戻って学習する。

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